CDIとは

2022年7月20日バイクパーツ用語解説

目次

CDIとはなにか?

CDI デイトナ

CDIとはキャパシター・ディスチャージド・イグニッション (Capacitor discharge ignition)の略で、コンデンサーの蓄電作用を利用した点火装置の一種で、バイクや車などに積まれているエンジンはもちろん、芝刈り機や発電機などのあらゆるエンジンに使われています。

点火装置の種類はCDIのほか、ポイント式、セミトラ式、フルトラ式などがありますが、あまり深く掘り下げてしまうと難しくなりすぎてしまうため、この記事では、純粋にCDIについてのみ解説していきます。

CDIが一般的になる前までは、ポイント式と呼ばれる点火方法が一般的でしたが、CDIの登場により、安定した点火が可能になりました。

もう少し詳しくCDIのメリットについてお話しすると、上記でも紹介したそれまでのポイント式にみられる多くのデメリットを払拭できることが最大のメリットと言えます。

CDIのメリット

CDIのメリットをお話しする前に、それまで主流であったポイント式のデメリットを理解する必要がありますので、簡単にポイント式について解説しておきましょう。

ポイント式点火装置の仕組み

ポイント式点火
引用:ドームハウスとKH250とオーディオの記録

ポイント式をざっくり説明すると、ポイントと呼ばれる物理的なスイッチ機構を用いて、電源となる電気を、クランクやカムなどの回転により、ポイントを強制的に切り離します。

そして、その瞬間に発生する数百ボルトの逆起電力を、イグニッションコイル内の1次コイルから2次コイルの巻数の違いによって昇圧させ、スパークプラグに2~3万ボルトの高電圧な電流を流します。

ポイント式の一番のデメリットは、クランクやカムなどと接し、常に回転摩擦を受けているヒールと呼ばれる部分の摩耗や、接点を切り離すときに起きる電気火花(スパーク)によるポイントの摩耗が避けられないということです。

そのため、定期的なポイントギャップ(隙間)の調整や交換が必要になります。

また、エンジンの回転によりポイントの開閉速度が変化するため、特に低回転になる始動時などでは強い電力を生み出しづらい傾向にあり、特にポイントが劣化した状態では始動性が著しく悪化します。

逆に高回転になりすぎると、ポイントの開閉がエンジンの回転についていけない状態(チャタリング)を起こすなど安定せず、高出力の高回転エンジンでは限界がありました。

CDIのメリットはメンテナンスフリー

CDIは機械的な接点を持たず、ポイント式のように物理的な摩耗などの劣化がないため、定期的な交換や調整を必要とせず、ほぼメンテナンスフリーであることが最も大きなメリットです。

そして、上記で解説したように、ポイント式の原理は、強制的に電気回路を遮断するときに起きる逆起電力であるため、どうしても点火に必要な2~3万ボルトの高電圧になるまでにはタイムラグが生じてしまいますが、CDIは、コンデンサーに蓄電された電気を一気に放出するため、このタイムラグが少なくなるのです。

また、エンジンの回転に合わせ、カムやクランクなどの物理的な力で作動するポイント式と違い、クランクなどに仕込まれた磁器スイッチなどから点火信号を得ているため、始動時などの低回転時や、チャタリングが起きてしまう高回転のときにも、常に安定した点火を行うことができます。

CDIの種類

CDIには、駆動電源の種類により大きく分けて2種類に分類され、オルタネーターによって発電された交流電力を駆動電源とする方式を「AC-CDI」、バッテリーの直流電流を駆動電源とする方式を「DC-CDI」と言います。

一般的な市販車には「AC-CDI」が採用されていることが多く、特徴としてはオルタネーターで発電した交流電流を利用しているため、例えバッテリーが完全にダメになる、もしくは取り外してしまってもエンジンは問題なく運転することができます。

逆に直流電流で駆動する「DC-CDI」は、エンジンの回転に多少左右されてしまうオルタネーターの電源よりも、常に安定した電源を確保できるため、より正確な制御が可能になります。
ただし、電源をバッテリーから供給しているため、バッテリーが完全にダメになってしまった場合や、バッテリーを取り外した状態では、エンジンをかけることはおろか、通常の作動もしなくなってしまします。

CDIの原理

上記でご紹介したように、駆動電源の違いにより、CDIには2種類あることはお分かりいただけたかと思いますので、ここからはCDIの原理について解説していきたいと思います。

頭文字のCはキャパシター(capacitor)の略で、容量の大きなコンデンサー(蓄電器)を意味し、Dはディスチャージド(discharge)で、意味は放電。

つまり、蓄電器に蓄えた電気を放電する点火システムということになります。

上記のポイント式について解説した通り、点火プラグに最終的送られる電圧は2~3万ボルトの高電圧でなくてはなりません。

そのため、1次電圧(数百ボルト)をイグニッションコイルで昇圧し、2次電圧(2~3万ボルト)を作り出していますので、1次電圧(流)を、イグニッションコイルに流すことが、そのままスパークプラグの点火につながるということです。

CDIは、オルタネーターやバッテリーから供給された電気を、小型の変圧器を使って400ボルト程度にまで昇圧しコンデンサーに蓄電します。

そして、クランクなどからの電気信号をトリガー(きっかけ)にし、サイリスタと呼ばれる電気的なスイッチをONにすることで、コンデンサーに蓄えられた電気を放電します。

この放電された電気が、1次電圧(流)としてイグニッションコイルに送られ、スパークプラグが点火するのです。

チューニングにおけるCDI交換

ここまで少々難しい話になってしまいましたが、ここからはチューニングとCDI交換についてお話ししていきたいと思います。

皆さんがCDIの交換をするとしたらなんの目的で交換するでしょうか?

CDI交換する目的は、「スピードリミッターを解除したい」または、「純正のままでは点火が追い付かなくなってきた」の2通りになると思います。

2通りしかないの?と思った方もいるかもしれませんが、CDIをただ闇雲に社外品に交換しただけでは、パワーアップなどはまず期待できず、CDIは目的を持って交換するものと理解しましょう。

CDIとスピードリミッターの話

50ccの原付などで、CDIを交換してスピードリミッターの解除を行うことは、チューニングの第一歩とも呼べる定番メニューです。

純正の状態では、メーカー側の自主規制により、原付は60km/h以上速度が出ないように、点火時期を遅らせる、または、点火信号をカットしているため、実際には58km/h程度までしかスピードは出ません。

そのため、社外のCDIに交換することで、スピードリミッターを解除することができるのです。

また、製品の中には、そのメーカーが出しているマフラーなどのチューニングパーツに合わせ、あらかじめセッティングがされているものもあるため、トータルで交換すればパワーアップが期待できる商品もあります。

ただし、あくまで原付が認められている公道での制限速度は30km/hですので、サーキットなどの閉鎖された場所だけにしておきましょう。

トータルチューニングでのCDI交換

ここからは、「純正のままでは点火が追い付かなくなってきた」場合になぜCDIを交換する必要があるのかについてお話しします。

マフラー交換程度の簡単なチューニングメニューでは、純正のままでも特に問題はありませんが、圧縮比を上げた、カムプロフィールを変更した、などというややハードなチューニングメニューを施した場合には、CDIの交換も視野に入れておいた方が良いかもしれません。

エンジンは、パワーを上げようとすると、必然的に高圧縮、高回転になっていきます。すると、高圧縮された混合気の中でも確実に点火する強い火花と、高回転に合わせた早目な点火タイミングにする必要があるのです。

そこで、リミッターカットでも触れたように、社外のCDIはある程度のチューニング内容を予測して、あらかじめセッティングされている商品が多くあり、また、中には手元のコントローラーなどで、点火タイミングを変更することができる商品なども販売されています。

そのため、今はまだノーマルでも、将来的にさまざまなチューニングを考えているのであれば、社外のCDIに今のうちから交換しておくというのも、チューニングの第一歩としては有効であると言えるのです。

 

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