タップ・ダイスの使い方

2018年11月27日工具&ケミカル系

トルクレンチで正確なトルク管理する為には、トルク管理する前にタップ・ダイスでねじ山の異物を取り除く必要があります。
手間ですが必ず良い仕上がりになることをお約束します。

今回は、タップ・ダイスの使い方について解説します。
是非、参考にして頂きたい。

整備情報

  • 整備周期の目安: 状態に応じて対応、エンジン等の精度を求める箇所は分解毎
  • 時間: 1分(ボルト・ナット各1本)
  • 費用: 0円~3,000円
    • タップ・ダイスセット:約3,000円
  • ショップ工賃: 約500円(6本)
  • 難易度: ★☆☆☆☆

作業手順

1.ねじのサイズ確認方法

タップ・ダイスを立てる為にねじの情報が2つ必要になります。

  1. ピッチ
  2. ねじ径

これらを確認していきましょう。

ピッチの確認

ネジ山とネジ山の間隔をピッチと呼びます。
タップ・ダイスを立てるには、ナット・ボルトと同じピッチのサイズを使用する必要があります。

ピッチゲージ

ピッチを調べるには、ピッチゲージを使いましょう。
ピッチを間違えてタップ・ダイスを掛けてしまうとねじ山を潰してしまうので注意しましょう。
ピッチゲージ購入はこちら
タップ・ダイスセット(ピッチゲージ含む)購入はこちら

ピッチゲージ使い方

ピッチが合えば上記画像のようにピッタリねじ山にフィットします。
上記画像のねじ山の間隔は1.25mm間隔(ピッチ)と判明しました。

ピッチゲージ使い方2

ピッチが合わなければ、上記画像のようにねじ山にフィットしません

ノギスを使用したピッチ計測方法

ねじ山の頂点と隣のねじ山の頂点を計測しましょう。
少しでもずれると別のピッチの数値になってしまうので丁寧に計測しましょう。

ネジ径確認方法

ノギスとボルトノギスボルトサイズ計測

ノギスで、ボルトの径を計測するとネジ径は『8mm(M8)』であると分かります。

上記の事から計測したボルトは、ピッチ1.25mmのねじ径8mm(M8)ということが判明しました。
よって、ボルトに使用するダイスはピッチ1.25mmのM8になります。
雌ネジに使用するタップはピッチ1.25mmのM8になります。

2.タップの使い方

トルク管理前のタップの使い方

基本的に全てのねじ山にタップ・ダイスを掛けましょう。
ねじ山を清掃しないとトルクレンチ使用時にネジが折れたり、トルク不足で走行中に外れる場合があります。
詳しくは、トルクレンチを使う前にタップ・ダイスを掛ける必要性をご覧下さい。

タップをタップハンドルに装着タップをタップハンドルに装着3

タップをタップハンドルに取り付け、プライヤーで締め付けて固定しましょう。

タップに潤滑剤塗布

浸透潤滑剤やエンジンオイルをタップに塗布しましょう。
少し遠めから吹き付けてタップ全体に潤滑剤がかかるようにしましょう。

潤滑剤を塗布する目的は、削った鉄粉による目詰まりを抑える為に使用します。

タップをかける

パーツを押さえてタップを時計回りに回しましょう。

タップを戻す

タップを立てていくと、手ごたえが固くなる箇所が出てくる場合があります。
固くなったら1回転戻し再度挿入しましょう。
基本動作は、3回転まわして1回転戻すです。

タップを掛ける長さが長いほど接触面積が長くなるので固くなっていきます。
タップを戻すことで切り粉を避けながら挿入できます。

タップ清掃

タップ使用後パーツクリーナーで削り粉を清掃して使用・保管しましょう。
また、使用中にタップに汚れが過度に付着するようならタップを適宜パーツクリーナーで清掃して使用してください。

スペースが狭い箇所でのタップをする場合

ホーザン(HOZAN) タップハンドル K-437A YD-1200

スペースが狭い所でのタップは、T型のタップハンドルを使用すると良いでしょう。

T型タップにもサイズがあるので以下の紹介するタップはバイクメンテナンスで主に利用できます
大きめのタップに関しては、タップサイズが大きくなり力が必要になったら別途購入すると良いでしょう。
T型タップの購入はこちら
大きめのT型ラチェットタップハンドル購入はこちら

新たに雌ネジを形成するタップの立て方

使用するドリルとタップは、タップ下穴寸法一覧表をご覧ください。
また、リコイルする場合はリコイルキットをご使用下さい。

  1. メネジを形成したい箇所にドリルで下穴を開けます。
    タップ下穴寸法表はこちら
  2. タップをタップハンドルに取り付け。
    ※プライヤーで固定を忘れずに行いましょう。
  3. タップに浸透潤滑剤、もしくはオイルを塗布する。
  4. タップハンドルごとハンマーで軽く2回ほど叩き、下穴に馴染ませます。
  5. タップハンドルを下穴に押し付けながら、時計回りに回す。
  6. 3回まわして1回戻すを繰り返す。
  7. タップを取り外し、メネジとタップを清掃・保管

タップをハンマーで軽く叩く事で下穴に食い込み、ブレることなく垂直のままタップを立てることが出来ます。
因みに、逆タップの場合は強く叩きますがタップの場合は軽く叩くだけなので間違えないように注意しましょう。

4.ダイスの使い方

ボルトに潤滑剤を塗布

浸透潤滑剤やオイルをボルトに塗布しましょう。
タップ同様、削った鉄粉による目詰まりを抑える目的で塗布します。

ダイスを使用するダイスを使用する2

ダイスを掛けましょう
上記画像ではメガネレンチとダイスハンドルにダイスを取り付けて使用していますが、汚れを除去する事が目的の場合はメガネレンチとダイスハンドルは使う必要はありません。
素手でボルトを持ち、ダイスを手で回す事で素早く掛けられます。
潰れたねじ山を成形する場合にはメガネレンチとダイスハンドルを使用して下さい。

ダイス清掃

ダイス使用後はパーツクリーナーで清掃しましょう。
汚れが付着した状態で放置しておくと汚れが取りずらくなります。

5.タップ・ダイスのサイズを持ち合わせていない場合

硬めの歯ブラシとパーツクリーナーを使用してねじ山の汚れを落としましょう。
ねじ山の汚れを落とし締め付けトルクの精度を向上させる目的で行います。
アクスルシャフトやフレームピポットシャフト等の大きいねじに対して有効です。

6.バイスとワークベンチで効率アップ

卓上バイスバイスに固定

パーツに力を加えると動いてしまい作業しにくい場面が出てきます。
そこで、ワークベンチに卓上バイスを設置して使用する事でパーツが動かずに作業できるのでお勧めです。

  • ワークベンチの詳細情報と購入はこちら
    ホームセンターでも入手可能
  • バイスの詳細情報と購入はこちら
    ボール盤用バイスは挟む箇所がフラットなのでパーツに傷付きにくいです。

まとめ

  • タップ・ダイス使用前、ノギスとピッチゲージでボルトの径とピッチを計測してタップ・ダイスサイズを選定する。
  • タップ・ダイス使用前、ねじ山に潤滑剤を塗布してから使用する。
  • タップ・ダイス使用中、固くなったら戻す(基本動作:3回まわして、1回戻す)
  • タップ・ダイス使用後、パーツクリーナーで清掃して再度使用もしくは、保管すること

Q&A

  • ねじが取り付けできなくなった。
    • 異なるピッチのタップ・ダイスを使用してしまうとねじ山を痛めてしまいます。
      異物を取る目的で使用する場合、ピッチが合うとある程度スムーズに入っていきます。
      ピッチが合わない場合は、力を入れないと挿入できないほどなので、抵抗が大きい場合には再度ピッチを計測してサイズ確認をしましょう。
      既にねじが装着できない場合の対策としては、メネジ(ねじ穴側)の場合はリコイルをおすすめします。オネジ(ボルト側)の場合は、新品ボルトを使用しましょう。純正ボルトがある場合は、純正ボルトを注文しましょう。
  • 毎回タップとダイスサイズを計測するのは面倒ではないでしょうか?
  • ロックナットにはタップは掛けられませんか?
    • ナットのロック箇所まで可能な限りタップを入れ、パーツクリーナーで汚れを吹き飛ばすと良いでしょう。

 

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