インジェクション

インジェクション

インジェクションとは

インジェクションという言葉を直訳すると、内部に直接注入するという意味になりますが、バイクや自動車のエンジンにおいては、燃料噴射(fuel injection)の総称として使われる呼び名で、従来のキャブレター式とは違い、燃料ポンプで圧力をかけたガソリンを、電磁弁(インジャクター)を使用し、インレットマニホールドや燃焼室などに噴射する方式です。

インジェクションのメリット

従来のキャブレター式の場合は、吸入空気をベンチュリと呼ばれる細く絞られた通路を通過させる際に生じる負圧を利用して、ガソリンを吸い上げ霧化していましたが、この方法では気圧や気温など周囲の環境に左右されてしまいます。
一方インジェクション方式の場合は、あらかじめ圧力がかかったガソリンを、ECUの指示で意図的にインジャクターを開閉し、燃料の噴射量、噴射時期などを細かく制御するため、出力の向上や、燃費の向上を容易に行うことができ、インジェクション方式の最大のメリットです。

インジェクションのデメリット

環境問題の観点からもメリットが多く、いまやほとんどのエンジンで採用されているインジェクションですが、従来のキャブレター式と比較すると、部品点数が圧倒的に多く、制御が複雑になるというデメリットがあります。

まず、燃料ポンプやインジェクターなどの噴射装置はもちろん、最適な噴射量と噴射時期を決めるために、吸入空気量、排気ガス内に含まれるの酸素濃度、スロットル開度、エンジン回転数、水温などなど、非常に多くの情報を得る必要があり、必要な情報の数だけ、専用のセンサーの種類と数はとても多くなってしまいます。

そして、その各センサーからの情報をコンピューターで解析し、インジャクターに噴射の指示を出しているのですが、その制御は非常に複雑且つデリケートな値であるため、現在のバイクに搭載されているコンピューターは、ひと昔前までのハイスペックコンピューター並みの性能が要求されます。
部品点数の増加や、高度なセンサーやコンピューターを必要とするため、製造コストが高騰してしまうということもデメリットと言えるでしょう。

インジェクションの進化

いまや50ccの原付バイクにも採用されるようになったインジェクションですが、インジェクション自体の歴史は古く、文献によれば、世界初の機械式噴射装置は1883年にさかのぼり、なんと1903年に世界初の有人飛行に成功したライト兄弟の飛行機に搭載されていたエンジンにも、機械式の燃料噴射装置が採用されているのです。

その後、国産の市販車では1972年の日産ブルーバードから始まり、以降自動車の燃料噴射方式は、電子制御のインジェクションに次々と移行していくことになりますが、1970年代の電子制御は、まだまだ脆弱な面が多く、特に外部からの電気ノイズなどの影響を受けやすかったため、高圧送電線の下を通過する際にエンストしてしまうなどの不具合もありました。

また、現代のインジェクション技術の進歩は目覚ましいものがあり、低燃費化、高出力化を実現するため、さまざまな改良が加えられ、噴射量や噴射時期などの制御はより綿密になり、最終的に燃料を噴射するインジェクターは、燃料を噴射するホール(穴)の数が、1ホールタイプから徐々に数が増えマルチホール化されることにより、効率的に燃料を霧化できる工夫がされています。

その反面、マルチホール化したことでホールの直径は小さくなり、燃料フィルターの汚れなどが原因でインジェクターが詰まりやすいと言った不具合が多くなっています。

バイクのインジェクション化

自動車のインジェクション化は、排気ガス規制などの影響もあり急ピッチで広がることになりますが、バイクに対しての規制は自動車ほど厳しくなく、部品点数の増加や信頼性の問題から、バイクでのインジェクション化は若干遅れ、世界で初めてインジェクションを採用したバイクはカワサキのZ1000Hで、国内の市販車では1982年に同じくカワサキのZ750GPで初めて採用されました。

世界で初めて量産車としてインジェクションシステムKEFI(カワサキ・エレクトリック・フューエル・インジェクション)を採用したZ1000Hですが、当然現在のインジェクションシステムとは、コンピューターやセンサーなどの技術は発展途上であったことや、電子制御もごく初歩的なLジェトロニック方式であったため、吸入空気量が少ない低回転域ではアクセルのレスポンスはあまり良くありませんでした。

国内市販モデル初のインジェクション車

そして2年後の1982年には、国内市販車として初のインジェクションモデルとなるZ750GPにおいて、KEFIよりもセンサーの数を増やし、より正確な燃料噴射を行うことで、レスポンスなどを大幅に向上させた、d.f.i(デジタル・フューエル・インジェクション)が登場します。

しかし、改善したとは言え、当時の演算処理を行っていたマイコンは8ビット。
8ビットと言うと、あの任天堂のファミコンと同じレベルのコンピューターということですので、現在の最新式のコンピューターで処理されているインジェクションとの性能差は容易に想像できると思います。

上記のデメリットで挙げたように、当時は電気ノイズの影響によるエンジン不調や、電気を大量に消費する、製造コストがかかるなど、さまざまな問題が生じ、1984年に発売されたZ750ターボを最後に、カワサキ製のインジェクション車両は、1999年まで登場することはありませんでした。

 

インジェクションの制御方式

ここからはインジェクションの基礎、制御方式の違いを少しご説明していきたいと思います。

機械式

冒頭でも触れているようにインジェクションの歴史は1883年(日本で言うと明治16年!)にさかのぼり、当然コンピューターなどというものが無い時代ですので、燃料噴射量の決定は機械的な作動によって行われていました。
現在のエンジンでは機械式インジェクションは使われておらず、電子制御式が採用されています。

電子制御式

現在では主流の方式であり、インジェクションと言えば電子制御燃料噴射装置のことを指し、ガソリンの噴射量や噴射時期は、多くのセンサーから送られてきたデータを基に、コンピューターで演算され決定されます。

 

インジェクションのチューニング

それでは、ここからインジェクション車のチューニング方法をいくつご紹介していきますが、まず、チューニングする上でのキャブ車との違いからご説明します。

キャブレーターは自然現象、インジェクションは人為的

キャブレターは、流れる空気が自然に発生させる負圧によって燃料を吸い上げているため、ガソリンと空気の比率を変更するには、ガソリンの量を調整することが基本になり、その調整は、「ジェット」を交換することで、物理的にガソリンが出てくる穴の大きさを変更します。

ものすごく簡単に言うと、スロットルを開けたときにガソリンの量を増やしたければ、メインジェットを交換し、アイドリングや低回転時の調整には、スロージェットの交換を行います。

そして、インジェクションの場合、コンピューターが各センサーから送られてきたデータをもとに計算し、制御マップから最適なガソリンの噴射量と噴射時期を決定し、インジェクターに指示を出しているので、極端な言い方をすれば、スロットル開度や吸入空気量に関係なく、コンピューターの指示さえあれば燃料の噴射量と噴射時期を変えることができるのです。

基本的なチューニング方法

そこで、インジェクションのチューニングの第一歩は、「コンピューターから出される指示を変更すること」から始まります。

代表的な方法は主に2種類で、まずはあらかじめ純正とは異なった制御マップがプログラミングされたコンピューターに交換するか、もともとのコンピューターにプログラムされている制御マップを書き換える方法で、俗にフルコンやロムチューンと言われる手法です。

そしてもう一つの方法は、コンピューター本体のプログラムには手を加えず、コンピューターが判断する材料としている各センサーからのデータを、意図的に変更する方法で、例えば実際の吸入空気量よりも、ほんの少し多く吸い込んでいるというデータに変更し、コンピューターに送ることで、ガソリンの噴射量を意図的に多くすることができます。
この方法は、フルコンの交換やロムチューンと違い、あとからの変更もし易く、すぐに純正状態に戻せるという利点があり、通称サブコンチューンと言います。

ただし、どちらの方法を選択するにしても、エンジンのチューニングは、どこか1か所では満足する結果は得ず、なた、場合によっては不調をきたす原因になることもありますので、インジェクションをチューニングする際のコンピューターチューニングの目的は、マフラーやエアクリーナーなど、その他のパーツが決まったあとに、そのすべてをまとめ上げる目的と理解していただくと良いでしょう。

 

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