ABSの仕組みと効果について徹底解説!

ABS

ABSとは

ABSとは、Antilock Brake System(アンチロックブレーキシステム)の略で、日本語に直訳すると、ブレーキをロックさせないための機構ということになります。

また、どんな物体でも、常に直線的に一定の運動を続けようとする力が働き、これを「慣性の法則」と言い、慣性の法則についての説明は省略しますが、簡単に言ってしまえば、少しでもバイクが動いているとき、空気抵抗や転がり抵抗などの抵抗力を除けば、そのバイクは一定の速度でまっすぐ進み続けようとしているのです。

そして、自動車やバイクなどは、ゴム製のタイヤと路面の摩擦力(グリップ力)によって滑ることなく加速し、旋回し、減速することができます。

つまり、減速または停止しようとブレーキかけると、バイクにはそうはさせまいと進み続けようとする慣性力が働き、その慣性力に対してブレーキの制動力と、タイヤのグリップ力が上回った場合に、スリップすることなく安定して減速または停止することができます。

しかし、慣性力にブレーキが勝ったとしても、タイヤのグリップ力が負けてしまうと、路面に食らいつくことができず、タイヤはロックし、スリップ(滑る)してしまうことになります。

ABSは、このように慣性力がタイヤのグリップ力を超え、ロックしないように制御する機構で、現在市販されている自動車やバイクは、電子制御化されたABSが採用されています。

ブレーキの重要性

皆さんは、自動車やバイクの最高速度を上げるためには何が必要だと思いますか?

もちろん、大出力のエンジンや空力に優れたボディなどもなくてはならない要素ですが、近代の一般に市販されている自動車やバイクの速度を上げることができるようになったのは、ブレーキの進化が欠かせない要素だと言われているのです。

どんなに高出力のエンジンを搭載していても、確実に減速できる制動力と、安心感をもってしっかりブレーキを掛けられる安定性と安全性が無ければ、最高速度を上げることはできないのです。

タイヤのグリップ性能や、ブレーキの制動力の向上と同じように安心して安全にブレーキを掛けるためのABSは、スピードアップにつながる大事な要素なのです。

ABSの効果

冒頭でも触れたように、そのまま進み続けようとする慣性力が、タイヤのグリップ力を超えてしまった場合にタイヤはロックしてしまうことになり、ABSは、もっともタイヤグリップ力を発揮しやすい、ロックしないギリギリの状態をキープできるように自動的に制動力を調整してくれます。

それでは、ABSが装着されていない場合と、装着されている場合では、実際にどのような違いがあるか、とても分かりやすい動画がありますので観てみましょう。

ABSが非装着の場合の特徴

ご紹介した動画では、海外仕様のスズキSV650Sに転倒防止のプロテクターが装着され、意図的に濡らされた低μ路で行われています。

見ていただくとわかる通り、ABSの効果は一目瞭然ですが、ABSが非装着(意図的にキャンセルされた状態)の場合では、前後ともタイヤが完全にロックし、バイクはコントロールを失い横を向いてしまっています。

また、バイクはタイヤが回転することで得られるジャイロ効果により安定性を維持していますが、タイヤがロックしてしまうと、ジャイロ効果を失い一気に転倒する危険性が高まります。

転倒防止のプロテクターが装着されているため、映像では転倒することはありませんが、ライダーが飛ばされないようバイクにしがみついているのが印象的です。

もしも、転倒防止のプロテクターが無ければということを考えると、実験と分かっていてもゾッとします。

ABSが装着されている場合の特徴

一方、ABSが効いている場合には、まるで何事もなかったかのように停止することができています。

また、ABSが効いているときのフロント回りの動きにひとつ大きなポイントがあります。

その動きは、動画の0:15~0:18あたりが一番わかりやすく顕著に出ており、ライダーは目一杯ブレーキかけているにも関わらず、フロントフォークが大きく上下しているのがお分かりいただけると思います。

この上下動こそが、ブレーキの制動力を自動でコントロールし、いわゆるポンピングブレーキをかけてくれている証拠です。

ポンピングブレーキとは

タイヤがロックしたらすぐにブレーキを緩め、またブレーキを掛けるという動作を連続して行うことで、制動距離の短縮や運転操作が行えるようにする運転技術のことです。

ABSの仕組み

それではここから、ABSの仕組みや原理について簡単に解説していこうと思います。
ABSを構成する主な部品は、車輪速センサー、ABSコントロールユニット、ABSモジュールの3つで、それぞれの役割や作動について説明していきます。

車輪速センサー

現代の電子制御式ABSは、まず、車輪の回転速度を「車輪速センサー」で測定し、常にタイヤの回転速度を監視しています。

タイヤの回転速度は、各タイヤ(ホイールハブ)に取付けられた電磁センサーと、パルスホイールによって計測され、このパルスホイールには、全周に渡り凹凸や溝が刻まれています。

この凹凸や溝がセンサーの近くを通過することで断続的なパルス(電気信号)が発生し、単位時間あたりのパルスを計測することで回転速度を計測しているのです。

ABSコントロールユニット

ABSコントロールユニットは、車輪速センサーから送られてくるパルスを計測し、運転者がブレーキを掛けた際、実際の速度とタイヤ回転数の差を監視しています。

ロックしていない状態であれば実際の車速との差はほとんどありませんが、タイヤがロックすればその差が大きくなり、ABSコントロールユニットは「タイヤがロックしている」と判断できます。

そして、ロックしていると判断すると、ブレーキ油圧をコントロールしているABSモジュールに支持を出し、ブレーキ油圧を減圧しロックを解除、回転が戻ると油圧を回復させます。

ABSモジュール

基本的なブレーキの構造は、ブレーキレバーやブレーキペダルを操作する人間の力を、マスターシリンダーによって油圧に変換し、ブレーキキャリパーによってブレーキパッドをブレーキディスクに押し付け、制動力を発生させています。

ABSモジュールは、マスターシリンダーとブレーキキャリパーの間に存在し、コントロールユニットの指示により人間の力で発生した油圧をリリースする(逃がす)ことによってブレーキを緩めています。

バイクにおけるABSの歴史

ABSはもともと航空機や鉄道用に開発されたシステムで、最初はフライホイールという金属製の円盤をタイヤと共に回転させ、車輪がロックした際には、慣性力でフライホイールがブレーキを一時的にリリースするという機械式でした。

その後、市販バイクにABSが装着されたのは、1987年に登場したBMW車のK100からで、1978年に電子制御式のABSが装着されたメルセデスベンツの自動車よりも10年あとのこととなります。

当初は大型高級ツアラーにしか採用されず、その他のメーカー、特に国産車メーカーが積極的に採用するようになってきたのはごく最近のことです。

ABS採用が遅れた理由

ABSを構成する部品であるABSモジュールやコントロールユニットが大きく、重量があったため、50cc のスクーターから大型バイクまでラインナップする国産メーカーでは採用し辛かったとも言われています。

また、採用が遅れたもう一つの原因は、車とバイクの特性の違いが大きく影響しています。
車はブレーキペダルを踏めば全車輪にブレーキを掛けることができますが、バイクの場合は、前後別々の操作を行う必要があり、前後のブレーキをいかにうまく操作するかは、ライディングテクニックの重要なポイントになっています。

そして、上記に掲載した動画にある通り、断続的なポンピングブレーキをあまり強くかけ過ぎてしまうと、車体が大きく上下してしまい、逆に安定性を欠く結果になってしまいます。
そのためバイクのABSは、前後別々にコントロールすることはもちろん、自動車以上の繊細な制御が求められるのです。

技術が進歩し、今ではABSモジュールやコントロールユニットは小型・軽量な物になり、コントロールユニットの制御技術も向上してきたことから、世界各国のメーカーが積極的に採用するようになったのです。

ABSは制動距離が長くなるケースもある

この記事では、ABSのおかげで転倒するリスクを減らし、制動距離が短くなるとご紹介してきましたが、制動距離については、路面の状況によってはABS非装着車に比べ、ABS装着車の方が長くなってしまう条件があります。それは、砂利道や雪道など、路面の強度が低い場合です。

濡れたアスファルトが乾いた状態よりも滑りやすいのは、アスファルトとタイヤの間に水が入り込むことでタイヤのグリップ力が低下するためです。

一方、砂利道や雪道などは、タイヤの摩擦力に路面側が耐えられず砂利や雪ごと持っていかれてしまうため滑りやすくなるのです。

こういった軟弱な路面状況の場合は、タイヤをロックし、砂利や雪の食い込ませる方が制動距離を短くできる可能性があります。

ABSの限界

上記のように状況によってはABSが付いているからと言って、必ずしも制動距離が短くなるとは限らないのです。
そのため、ABS本来の目的とは、「車においてはハンドル操作が効くようにする」「バイクにおいては、タイヤの回転を止めず転倒のリスクを減らす」ということであると理解しましょう。

ABS義務化

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、新型車は2018年10月1日、継続生産車は2021年10月1日以降、ABSの装着が義務化されることになりました。

この法律はあくまで新車販売に関わることですので、現在お乗りのバイクや、中古車を購入する際には関係ありません。

また、126cc以上のバイクにはABSを、50~125ccのいわゆる原付二種にはABSまたはCBS(コンバインドブレーキ)のどちらかの装着が義務付けられます。

 

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